あるお別れの話
仕事を通じて知り合った人がいた。
おじさんよりもふた周り近く年上だけど、圧倒的なパワフルさに、知り合ってすぐの頃は圧倒されっぱなしだった。
仕事のために独身を貫いたバリバリのキャリアウーマン。
言うことは言う。
やることはやる。
非のうちようがない完璧な理論武装。
都会に住んでいたけど、定年を機に田舎に移住してきたそうだ。
数年前に子宮体癌になり、ステージも4、骨盤内臓器への転移浸潤も見られていたそうで、そのことは何度かご本人から伺ってはいたけど、そんなことをみじんも感じさせないパワフルさで、お会いする度に元気を分けてもらっていた。
食生活なども、とても研究されていて、免疫を高める食材や調理方法を見つけて実践されていた。
田舎への移住も彼女が病気に向き合うときに必要と判断してのことだったのかもしれない。
数年前に余命宣告をされていたそうだけど、それから7年間自宅で生活されていた。
ある時、彼女が「もう、私の癌に利いてくれる抗がん剤がないみたい。」と話していたことがあった。
半年ほど前だったかな…
抗がん剤の治療を終了したら、あっという間に腫瘍が大きくなって、手で触れると分かるぐらいに大きなしこりがお腹周りに何個もあったそうだ。
骨にも転移していたそうで、右腕をよくさすっていた。
受診の度に先生からは、ホスピスで穏やかな最期を迎えてはどうかと勧められたそうだ。
それでも、ギリギリまでご自宅で過ごすことを選び、昨年の暮れに説得されてホスピスに入所。
入所の前日に、「急に下肢が浮腫んで辛いから利尿効果のある漢方薬を調達してほしいんだけどお願いできる?」と連絡を受けたりもした。
利尿剤は処方箋がないと出してもらえないんだとか。
知り合いの薬剤師に駆け込んでいろいろ教えてもらって、何種類かの漢方薬を調達して届けた。
「明日からホスピスに入るから、それまでは最後の最後まで家にいたいのよ。予定より早く行きたくないじゃない。明日までもてばそれでいいからさ」と、電話越しに笑っていた彼女の声が印象的だった。
満身創痍だったはず。
でも、そんな姿はいっさい見せなかった。
笑顔でおじさんが持っていった漢方薬を受け取ってくれた。
あれから二週間。
今日、共通の知り合いから、数日前に彼女が亡くなったと知らされた。
わかっていても言葉に詰まった。
でも、最期は穏やかに旅立てよかった。
実は、彼女が亡くなったという日。
珍しく眠りが浅くて夜中に何度も目が覚めていた。
最後の挨拶に来てくれてきたのかなぁ。
彼女からは本当にいろんなことを教わった。
心からご冥福を願いたい。
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